おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『グランツーリスモ (2023)』【90/100点: 五感を震わす激アツレース映画】

昨年の『アンチャーテッド』に引き続き、SONY傘下のPlayStation Productionsが手掛けたゲームの映画化企画第2弾で、ド直球のスポ根映画でした。

ド直球とは言いつつも、あらゆる映画的な展開の面白さがこれでもかと盛り込まれており、様々な伏線をラストのレースですべて回収するという力技の内容にはなっているんですが、びっくりしたことにそれらがそれぞれ散漫になることもありません。

【ネタバレ若干あり】

お話

ドライビングゲーム「グランツーリスモ」に熱中する青年ヤン・マーデンボローは、同ゲームのトッププレイヤーたちを本物のプロレーサーとして育成するため競いあわせて選抜するプログラム「GTアカデミー」の存在を知る。

そこには、プレイヤーの才能と可能性を信じてアカデミーを発足した男ダニーと、ゲーマーが活躍できるような甘い世界ではないと考えながらも指導を引き受けた元レーサーのジャック、そして世界中から集められたトッププレイヤーたちがいた。想像を絶するトレーニングや数々のアクシデントを乗り越え、ついにデビュー戦を迎える彼らだったが……。(映画.comより)

とにかく画作りがすごい

これまでSF映画を撮りまくっていたニール・ブロムカンプが監督していることもあってか、ガチでやってるレースシーンの合間にインサートされる爆速回転ホイールの映像などがあまりにもカッコいい!ストーリーでも視覚でも楽しめる大変優秀な娯楽作だと思います。

ゲームで現実に「勝つ」

グランツーリスモ』と言えば初代PSから始まるレースゲームシリーズで、今やゲームではなく“ドライブ・シミュレーター”とまで呼ばれているほどのヴィジュアルエフェクトの拘りに定評があり、この拘りも相まって代表的なユーザーに所ジョージも居る一大シリーズです。

本作の主人公であるヤン・マーデンボローは実在の人物で、元々『グランツーリスモ』のヘビープレイヤーだった少年時代の経験(?)を基に、フォーミュラカーレースやル・マン24時間レースに出場したカーレーサー。本作ではまさにゲームプレイヤーからNISSANのチームで勝利を勝ち取るまでが描かれます。

話はオーソドックスなサクセスストーリー

当然ながらオープニングの時点で結末がある程度予想が出来る、正直言うと紋切り型のサクセスストーリーなんですが、単純であるが故に割と秒で映画のストーリーの渦に巻き込んでくれ、一気に本作の世界観に引き込ませるかのような大風呂敷が敷かれてます。

少年時代からレーサー養成チーム“GT(GRAN TURISMO)アカデミー”を経てプロレーサーとしてデビューするまでの流れも劇中のカーレースの如く爆速なのですが、“ハプニング(伏線)→解決(伏線回収)”が矢継ぎ早に発生こともあり、話の処理は早いのにちゃんと理解が出来るようになっています。

2大親父俳優

登場人物のポジションの設定も見事で、主人公のヤン・マーデンボローはゲームの『グランツーリスモ』でレースそのものを愛してしまった青年。そのヤンの『グランツーリスモ』の見事なプレイから自分の新規レースチームにスカウトする商業主義のダンを演じるオーランド・ブルームのいけ好かなさは見事。

しかし、本作のMVPは『ストレンジャー・シングス』のデヴィッド・ハーバー演じるジャックで、このジャックは元プロレーサーという出自で、プロ時代の死亡事故が原因で志半ばでレースを辞めてしまった悲しい過去を持つ傷アリの人。

ぶっきらぼうで最初は「何だよゲームオタクかよ」という夢も希望もないような人物設定ながら、このジャックが自分の中の呵責でレースを辞めてしまった過去を傷をヤンに託すまでのドラマは、正直ヤケドしそうなくらいアツいです。

とにかく画作りがすごい(2回目)

映像自体も「臨場感全振り!」というくらいの大迫力で、いやもうこれ…カッコいい以外の感想無いよね?って感じです。カーレースの映画なので当然ながら定期的にレースシーンになるんですが、カーレースで観たかったカットを余すところ無く全部観せてくれるという、アホな感想で言えば大盤振る舞い状態。

ニール・ブロムカンプ作品らしい、ビジュアルに拘りまくったVFX場面もかなり効果的に用いられており、これまで傑作SF映画群で培ったであろう映像テクが遺憾なく発揮されています。誇張せずに言っても「見せすぎ!」ってな雰囲気です。

個人的にかなり人を選ぶと思ってる『グランツーリスモ』というゲームを題材に、この現代においてとんでもない傑作をSONYが作ってくれたのですが、どうやら北米ではまずまずの微妙な興行成績だったようで…とはいえ、そもそもゲームの『グランツーリスモ』という要素はあくまで展開におけるキッカケでしかなく、本作の主題はシンプルに“レース”であり“師弟関係”や“親子の愛”なのです。

この潔さは達筆に値する、というのがワタクシの結論で、車好きだけでなくスポーツ映画好きは確実に気にいるであろうと思う、激アツな一作だと個人的に感じました。