おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『はたらく細胞 (2024)』【90/100点: 予想外にしっかり出来てるサイエンス映画】

人間の体内で活動する細胞を擬人化した漫画『はたらく細胞の実写化作品で、主人公はタイトルの通り(体内で働く)細胞たち。あらゆる万物の擬人化に定評のある変態国家の我らが日本らしい映画になっています。

ワタクシ、原作は未読だし「世界観がユニークだから観よかな」ってくらいの軽いノリで観に行ったら、前半は前述で書いた印象の通りユニークな世界観で豪華キャストがイキイキとしてるのが微笑ましい中、一転して戦争映画とバトルアクションが一気に始まりつつ同時にかなりヘビーな話も進行する後半と、個人的には思っていたよりもかなり見どころがありました。

【ネタバレなし】

お話

人間の体内には37兆個もの細胞が存在し、酸素を運ぶ赤血球や細菌と戦う白血球など無数の細胞たちが、人間の健康を守るため日夜はたらいている。高校生の漆崎日胡は、父の茂と2人暮らし。健康的な生活習慣を送る日胡の体内の細胞たちはいつも楽しくはたらいているが、不規則・不摂生な茂の体内では、ブラックな労働環境に疲れ果てた細胞たちが不満を訴えている。そんな中、彼らの体内への侵入を狙う病原体が動き始め、細胞たちの戦いが幕を開ける。(映画.comより)

ポップな世界観なのにストーリーがちゃんと出来てる

全体的にキュートな世界観ながら細胞側も人間側の話も手堅く作られてるので、大枚叩いた映画で客層が分かり辛い映画を作り勝ちな邦画の中でもここまで老若男女問わず楽しめる映画自ってのも案外珍しいんじゃないでしょうか。

舞台はマルモコンビである阿部サダヲ芦田愛菜の身体の中で、前半は主に阿部サダヲ演じる不摂生で身体がボロボロなおじさんのお話がメイン。年頃の女の子である芦田愛菜演じるニコは憧れの先輩とデートしちゃったりと、よくあるドキムネの感情が身体の中でどんな影響が出ているのか、なんて小ネタもちょいちょい挟まれます。

後半からは割とシャレにし辛い病気が題材となり、その悪性細胞と戦う永野芽衣佐藤健など、良性細胞が全員で攻防する展開となります。その際のダイナミックな映像もあり、「金かかってんなあ」と思うのと同時に、「この病気のこの段階はこういうことです」とちゃんと説明してくれるので、まあ分かりやすいのなんの。語り口としては相当上手くて、かと言って説明臭くもないのですごい関心した部分でした。

豪華だけど適材適所の好例

細胞を演じているのは永野芽衣佐藤健などキラキラキャストの他、入れ違いでドニー・イェン的な派手バトルを繰り広げる山本耕史仲里依紗など個性的な俳優の皆様。松本若菜なんてゆるふわ系ファッションのまま最後には良いところを持っていってしまうので、まさに役得と言ったところじゃないでしょうか。
阿部サダヲ芦田愛菜*1に関しても、意図的に『マルモのおきてを意識したキャスティングなんだと思うんですが、特に「うわァ愛菜ちゃん大きくなったなあ」という親戚のおじさん目線で観れるのもまた面白かったですね。

サイエンス映画としてもいける完成度

内科医とかじゃないので実際は分かりませんが、人体サイエンスモノとしてもNHKの『驚異の小宇宙 人体』シリーズのようにちゃんと作られており、やや誇張されてはいるものの、「なるほど白血球ってこんな働きしてるのね」だとか、そういう学びの部分も面白いです。子供はキャッキャッしながら楽しめ、大人たちは身につまされる、なかなか作りとして関心させられました。まあ原作が良いってのもあるんでしょうけど。

まあ詰め込み過ぎと言えば確かにその通りなんですが、内容処理の巧さもあり気になりませんでした。もしかしたら子供と一緒に観に行っている親の方が本作を楽しめるかもしれませんが、いずれにせよ「全年齢対象」という映画の制約を上手く利用して出来たなかなかの傑作だと思いました。

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感想(56件)

*1:思い返せば芦田愛菜を映画館で観るのは『パシフィック・リム以来です。