おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『レザボア・ドッグス (1992)』【75/100点: タランティーノの粗削りなデビュー作】

名匠タランティーノの実質的なデビュー作で、初作品から時間軸が行ったり来たりするタラ作品らしいブッ飛んでる構成で見応えがあります。

後の大物監督とはいえデビュー作だからか、次作『パルプ・フィクション』と比べても若干ユーモアに欠けていて、ついでに言えばチラホラ長ったらしい場面もあるのは正直本音なものの、犯罪ノワール映画としてはジョン・ウーっぽい漢の駆け引きのドラマとスリルに満ちあふれていてとてもよく出来ている秀作です。

【ネタバレなし】

お話

宝石店を襲撃するため寄せ集められた黒スーツ姿の6人の男たち。彼らは互いの素性を知らず、それぞれ「色」をコードネームにして呼び合う。計画は完璧なはずだったが、現場には何故か大勢の警官が待ち伏せており、激しい銃撃戦となってしまう。命からがら集合場所の倉庫にたどり着いた男たちは、メンバーの中に裏切り者がいると考え、互いへの不信感を募らせていく。(映画.comより)

デビューからタラ100%

寄せ集めでグループを組むことになった強盗団の話を軸に、強盗が失敗して「誰かが警察にチクったんだろう!」と疑心暗鬼になるメンバーの「その後」と、それぞれのメンバーたちが集まるまでの遡上を追う「過去」が入り組んだモノ。タランティーノがらしい、としか言いようがない人を食ったような犯罪スリラーになっており俳優たちもそれぞれ強面系の実力派俳優ばかりなので見応えがあります。

暴力シーンもフルスロットル

デビュー作とてまあまあな残虐シーンの場面もいくつか登場し、「タランティーノ映画ってこういうモノ!」と言わんばかりの耳チョン切りシーンはいつ見ても冷やっとします。主演のティム・ロスに至ってはほぼ全編血だらけで、あまりにもずっと血だらけなので、ティム・ロスが出ている他の映画ですら「あ、血だらけの人だ」と思ってしまうくらい強烈な印象が残ります。

実は『ヘイトフル・エイト』のプロトタイプ

後に『ヘイトフル・エイトで山小屋を中心にワンシチュエーションの犯罪スリラーを製作したタランティーノですが、本作ではまさにそのプロトタイプのように作中の3/4くらいは集合場所の倉庫の中で進行するものの、映像的にほとんど風景が変わらないのに飽きが来ません。この点をデビュー作でやってのけたタランティーノの発想力と構成力を持ってすると、彼の非凡な才能を認めざるを得ないでしょう。

パルプ・フィクション』よりはやや落ちる

とはいえ、やはり本作とほとんど一緒の空気感であった『パルプ・フィクション』と嫌でも比べてしまう為、アレと比べるとやや落ちてしまうのが正直本音なものの、やはり天才肌の監督故か本作もワンアンドオンリーな映画になっています。タランティーノ自身が既に次作で引退を表明しているので、出来れば次作はこういう粗削りな映画であってほしいな、とちょっと思うところです。