おすぎむら昆の「あんなま」

直近で鑑賞した映画をひたすらレビューしていきます。

『ロッキーVSドラゴ ROCKY IV (2022)』【85/100点: 要らない場面が消えてアツさを増やした再編集版】

1985年の『ロッキー4/炎の友情』のディレクターズカット版。85年のオリジナル版ではカットされた42分の秘蔵映像素材を追加、その上でオリジナル版の場面から約40分弱カット、実質の尺的にはプラマイ0という、全体的にがっつり大手術がされたスタローン渾身の再編集版『ロッキー4』*1というワケです。

もう…「“芋虫”が“蝶”になった!」…これですね、感想は。

【ネタバレなし】

お話

アポロ・クリードとの戦いを経てチャンピオンとなったロッキー・バルボアの前に、ソ連から“殺人マシーン”イワン・ドラゴが現れる。ドラゴとの激戦によって、ライバルであり親友のアポロを失ったロッキーは、対ドラゴ戦のためソ連へ乗り込む。(映画.comより)

編集ってすごい!

ソ連の最強アマチュアボクサーのイワン・ドラゴとのエキシビションマッチの末、顔面ストレートが致命傷になりリング上で逝った親友アポロ・クリードの意思を受け継いで、ドラゴと代理リターンマッチに挑むロッキー…という大枠のストーリーは基本変わらないのですが、ガワは同じだが中身は違う、って感じで、様々な点で印象が変わっています。“編集”ってすごい!

変更点で言うと一番わかりやすいのが、80年代的アメリカンドリームを手にしたロッキー家の金持ち描写がほぼ無くなっており、シリーズ屈指の迷場面、家事ロボットとポーリーのコメディシーンが消滅。他、ロッキーとアポロの友情に比重が置かれた構成になっていることもあってか、ロッキーJr.とドラゴの嫁(ルドミラ)も登場シーンがかなり減らされてます。

政治色が減って友情の話が増えた

オリジナル版『ロッキー4』では、冷戦末期のソ連が舞台ということで、スタローンの政治思想がありありと見え隠れ*2していました。故に「ロッキーがアメリカ国家の代表としてソ連に向かう」という、THEアメリカンヒーローみたいな感じにも見えてしまうのがオリジナル版の難点でもあったのですが、今回の再編集版ではその点も改善されて、ロッキーだけではない各人が複雑な葛藤をする人間ドラマとしてもガチガチに補強されております。

つまりは、「最強ボクサー同士の対決としてドラゴ戦に挑むロッキー」「親友アポロの名誉と意思を受け継ぎ、亡きアポロの分身としてロッキーが闘う」という、めちゃくちゃアツい“漢(おとこ)のドラマ”を補完する要素がそもそもオリジナル版では大きく削られていたということにもなるワケです。実際、「なんでカットしてたんだこの場面」ってところは結構多い。

人物描写が詳細に

オリジナル版だと人物描写が少なかったこともあり、ほとんど殺人兵器状態だったドルフ・ラングレン演じるドラゴもまた然りで、ドラゴのドラマも(小出しながら)結構場面が追加。そのおかげで、今回の再編集版では若干人間臭いドラゴになっています。2018年の『クリード 炎の宿敵』でやたらと親父臭いドラゴに対して「ドラゴ、お前そんなキャラだっけ?」みたいな印象の違和感が、今回の再編集のおかげで概ね解決している感じです。スタローンが今回再編集に臨んだ理由も、『クリード 炎の宿敵』の公開を受けて、実はドラゴの人間的な一面を復活させたかった、って部分はかなり大きかったんじゃないかと思います。

一方で、オリジナル版と本作とで共通している部分として、ファイトシーンは抜群!圧巻の迫力。シリーズ中でもベストと呼べるくらいの最高のファイトを披露してくれます。近年のスピンオフ『クリード』二部作を含んでも、『ロッキー』シリーズの中で、本作のラストを飾るロッキーVSドラゴの場面を超えるファイトシーンはない、と断言出来ます。リーチが長いドラゴと小回りが効くロッキーと、絶妙な対比になっていて、マジ胸熱です。

ラストの主題歌もアツい

ワタクシ的には、「70点だった『ロッキー4/炎の友情』が85点になって帰ってきた」って感じです。エンドクレジットの名曲「Hearts on Fire」が流れ始めた頃には、ワタクシはもうウルウル状態でした。実は凡作じゃなかった『ロッキー4』に、ド直球の感動をこれでもかと足してくれたスタローン監督、そして“ロッキー”に感謝!

*1:参考:『ロッキー4/炎の友情』の上映時間は91分、本作『ロッキーVSドラゴ ROCKY IV』の上映時間は94分。

*2:スタローン的には政治的な側面は、あくまで時代背景として取り入れてるだけ、というスタンスらしいですが。